サスァ・パルパレオスの『サスァ』って何さ

 皆様、長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
『心、この厭わしきもの』第二章『起つ心』、これにて終了でございます。
 相も変わらず趣味に突っ走ったおかげでビュウやヨヨやサウザーがとんでもない事になった挙句に今回もオリキャラ登場と相成ったわけですが、とりあえず、この話を今ここでしておかないと今後する機会がないので、今回の後書きのネタはこれで行かせていただきます。

 グランベロス人の名前について。

『心〜』シリーズで採用しているグランベロス人の名前は、ちょっとややこしい事は皆様ご存知の事かと思います。
 サウザーは、ディオ・サウザー=フォン=グランベロス。
 パルパレオスは、サスァ・パルパレオス=フィンランディア。
 アーバインは、ゲオルク・アーバイン=エルベブルク。
 バーバレラが、ギゼラ・バーバレラ=ケンプファー。
 さて、何でこんなおかしな名前になったか。
 理由はただ一つ。

 冒頭がそれです。


 それは、簾屋がネットで初めてミストさんを仲間する方法を知り、どうにかこうにか仲間にした時の事。
 ミストさんが、言いますね。自分を助けた人物の名前を。

「サスァ・パルパレオス」と。

 その時の簾屋の思考。

 えー、サスァ・パルパレオスぅ? 何それ? サスァ、って何? 姓? となると、オレルスの一般的な名前は『姓‐名前』って並びだったの? えー、それ勘弁してよ自分設定変えなきゃいけないじゃん!(おいコラ) でも、だからって『名前‐姓』の並びだと、サウザーはパルの事を名字呼びという親友同士にしちゃちょっと不自然な事になって……――

 実際、サスァって何なんでしょう? もしかして、名前とは関係なしに『ミスター』とか『サー』とか『ヘル』とかと同じ、名前の前に付ける尊称?
 その辺りが判明しても、直す気はありませんが。


 とにかく、そんなこんなでオレルスの名前制度について考え込んだ簾屋は、グランベロス人のそれについてだけ、こういう結論をつけました。

『名前‐姓』という並びだけど、『ミドルネーム‐ファーストネーム‐姓』にしよう!

 世界史でよく登場する、マリー・アントワネットや、マリア・テレジア。
 あの『アントワネット』や『テレジア』などの後ろについている名前は、一族の中で同じファーストネームを持つ者たちを区別するためのミドルネームなんだそうです。
 そこで、簾屋のグランベロス人の名前についての設定は、こうです。

『ミドルネーム‐ファーストネーム』という名前のつけ方は、一族の中で同じ名を持つ者同士を区別するために生まれたものだった。元来は貴族階級にのみ浸透していた慣習だったが、時代が下り、王属派遣軍の設立に伴い諸侯の私軍が本格的に国有化され、武力を削がれた貴族の権威が失墜していく中、貴族の真似をする事で彼らを批判しよう、とする者たちが現われた。その者たちはほとんどが王属派遣軍の士官だったが、出身階級は大半が農民を中心とする平民層だった。平民層の中でも出世頭となったその士官たちにあやかろうとして、貴族階級だけのものだった『ミドルネーム‐ファーストネーム』は、平民層にまで浸透していったのである。


 まぁ、ちょっと無理があるのはさておき。
 補足ですが、中世ヨーロッパにおいて、貴族というのは例外なく武家でした。彼らは領地を支配する代わりに、領民を保護し、近隣の貴族から戦いを吹っ掛けられた時には自前の兵士を率いてそれに当たらなければいけませんでした。そうしなければ攻めてきた連中に好き勝手に略奪されるし、そのせいで税収が減るし、挙句領民つきで領地まで持っていかれるからです。第一、領民を守らないというのは、如何にもキリスト教精神に反しています。
 その歴史的事実を全てベロス貴族の設定に生かすつもりはありませんが、上記の説明で、「武力を削がれた貴族の権威が失墜していく」というのは、つまりそういう事です。ちなみに、貴族の私軍が王属派遣軍に編成された後に誰がその領地を守るのか、といえば、国王の軍隊以外にありません。
 もっとも、こっそりと私軍を保持し続けた貴族もいくつかいたのですが、それは別の話。

 余談ですが、グランベロスは簾屋の中ではドイツ語圏です。だから、サウザーの姓に『フォン』がついているのです。



 さて、二章の内容について。
 いくらか消化不良の感が残るものの、引くべき伏線はあらかた引けた、と思っています。いくつかはバレバレでしょうが。
 ヨヨが、原作ゲームと比べてまるで別人になっていますが、これには一応『心〜』で採用している設定上の理由があります。それは、今後明らかにしていきます。

 そして今回一番書きたかったのは、四話から六話にかけての、ビュウの傭兵としての戦闘シーンです。一番書くのに手間取ったくせして一番書きたかったとか言ってるから始末に終えない
 とにかく、これで書きたいシーンの一つ、王女奪還は書き上げました。あと四つです。
 皆様、どうか生温い目で見守ってやってくださいませ。

 次章はキャンベル解放戦。
 更にオリジナル要素が強くなっていきます。
 そういうのが嫌だ、とおっしゃられる方は、閲覧を断念されるのも一つの手。
 でも、出来れば読んでいただきたいです。


 最後に。
『起つ心』で使用した背景画像は、『トリスの市場』様からお借りしました。


 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

 

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